製作技術室 設計・加工班 班長 的場 武
平成29年7月14日、試験当日。7月前半の悪い天候が嘘のように朝からいい天候に恵まれました。挑戦するのは今年で三回目。過去二回は散々な結果だったので、今回こそはしっかり結果を出したいと意気込んで会場へ向かいました。
試験会場には午前7時半に到着。会場に入るとすぐに試験で使用する旋盤の抽選が行われます。受付を済ませ作業手順や旋盤の操作方法を確認し、全体説明を受けた後、30分の練習時間が与えられました。私が受験した普通旋盤1級は、標準時間3時間30分、延長時間30分、合わせて4時間以内に課題部品を三点製作し提出しなければいけません。何度も何度も練習し、工夫を凝らさなければ時間内に完成させるのが困難な課題です。
9時30分、試験開始と同時に旋盤に向かいます。今日の最低目標は「慌てず丁寧に標準時間内に作り上げる」こと。しかし、いざ材料を旋盤に取り付けてみると、遊びが大きくいつも通りに調整をすることができません。開始早々大幅に時間をとられ、先が思いやられるスタートとなってしまいました。それ以降の工程は割と順調に進みましたが、どうしても練習に比べ本番は慎重になったり、何度も材料の取り付けに時間がかかったりして苦戦します。予定よりも時間をオーバーしながら作業を続けること1時間40分、ようやく機械の癖も掴んで作業にリズムがでてきました。
そして最後の工程、重要な部品同士のはめあい作業。普段通りに作業を進めれば終了10分前に完成させられる工程ですが、はめあいの具合を確認しようとしたところで、まさかの部品が入らないという事態が判明します。原因は測定器を読み違え、部品の一部が0.5mm大きくなってしまっていたこと。残り時間は40分しかありません。一瞬パニックに陥りそうになりましたが、一度落ち着いて対策を練ることに集中しました。完成までの方法は二つ。穴を大きくするか、大きい部分を削り直すか。しかし前者を選べば、時間内に完成はしても仕様外とされる可能性があります。よって時間内に作り上げることができない可能性はあるけれど、後者を選択することに。急ピッチで作業を再開しました。もう一度部品を旋盤に取り付けようとしますが、焦りのため調整に時間が掛かります。残り時間20分の所で先ほどの工程まで戻ることができました。残りの作業は通常30分以上かかると思われる作業でしたが、加工、組み付けまでを19分で仕上げ、何とか終了1分前に提出することができました。
検定当日は快晴でとても暑かったうえに、慣れない機械と癖の強いチャックに苦戦を強いられました。また大きな失敗もあり、自分自身の未熟さを痛感させられる試験となりましたが、加工手順や加工スピードについては十分合格水準にあると確信できました。
技能士という資格はそれがなければ仕事が出来ないというものではありません。挑戦する理由は人によって様々ですが、私の場合は、今までこなしてきた業務でどの程度の技能が身に付いていたのかを確認するためです。試験の合否はまだわかりませんが、今後もさらに難しい課題に挑戦し、自分自身の技能を研鑽し続けていきたいと考えています。