計測・分析技術室 観測・解析班 森下 和彦
1. はじめに
みなさんは、種子島ロケットコンテスト(以下、ロケコン)をご存知でしょうか?これは、手作りにより「モデルロケット」や「衛星機能モデル(以下、CanSat)」を開発・製作し、打上げて互いに競い合うことで、物作りの面白さや奥深さを体現するとともに、宇宙開発の普及や地域の活性化を図ることを目的としています。九州大学 大学院工学研究院 航空宇宙工学部門 麻生 茂 教授のご発案と、当時のJAXA種子島宇宙センター次長 松山 為昌 氏のご理解・ご支援の下、種子島ロケットコンテスト実行委員会(以下、本会)が立ち上げられ、2005年3月に第1回大会が開催されました。初回は参加チーム数9チーム、総勢29名で始まった大会ですが、回を重ねるごとに参加者が増え、直近の14回大会(2018年3月)では、全国から、北は北海道から南は九州鹿児島まで、参加チーム数59チーム、総勢243名となりました。大会期間中は、約300名の関係者が開催地である南種子町に3泊4日以上滞在するため、地元経済の活性化にもつながっています。南種子町の中心地にある唯一のコンビニでは、お弁当やおにぎりが瞬く間に売り切れてしまうほどの盛況でした。
参加者にとって高い旅費を払ってでもロケコンに参加したい一番の魅力は、何と言っても本物のロケットが打ち上げられる「JAXA種子島宇宙センター」にて、自分が製作した機体を打上げることができること、さらに、憧れのJAXA職員や宇宙関連企業の技術者と交流の機会があることです。また、ロケコンは他チームの機体のアイディアを知る学びの機会となり、参加者同士および地元の人々と交流ができる貴重な機会にもなっています。
大会ロゴ
2. 競技内容
ロケコンの競技はロケット部門4種目、CanSat部門1種目からなります。各部門には募集チーム数の制限があるため、本会の技術部会から選出される審査員が書類選考を行います。競技日が雨天で実施出来ない場合は、各種目の順位はロケコンに併設する技術発表会のプレゼンテーションの評価により決定します。競技内容は以下の通りです。
(1)ロケット部門
種目1:滞空・定点回収
内容:発射点から打ち上げ、できるだけ長く空中に滞在し、かつ着陸点がどれだけ発射点に近づくかを競う。
種目2:ペイロード有翼滞空
内容:ペイロードに翼をつけ、放出から着地までの滞空時間の長さを競う。
種目3:高度
内容:本会が支給する高度測定装置を搭載し、どれだけ高く飛べるかを競う。
種目4:フライバックタイムアタック
内容:本会が用意するペイロード3機を同じロケットで3回打上げ、1機目の打ち上げから3機目の機体・ペイロードを発射点まで回収する間のタイムを競う。
(2) CanSat部門
種目5:CanSat come-backコンペ
内容:高度50m前後からCanSatを投下し、その後飛行または走行して、あらかじめ指定した目標地点にどれだけ近く到達できるかを競う。
詳細は、以下種子島ロケットコンテストホームページをご覧ください。
http://jaxa-rocket-contest.jp/
3.大会運営について
筆者は九州大学に採用された2006年度の第3回大会から現在に至るまで、大会を企画運営する事務局の一員として参加しています。ロケコンが九州大学を中心に始まったことから、「ロケコン=九州大学が企画運営するイベント」という考えが事務局内で根強く浸透していたことにより、事務局業務が九州大学のメンバーに集中してパンク状態でした。ロケコンの準備の忙しさのピークは2月で、卒論・修論提出前の実験ラッシュとも重なり、帰宅する時には外は真っ暗虫の声、日付を超えるということもたくさんありました。やりがいのある業務ではありましたが、結構苦労が多かったことを覚えています。
大会運営に転機が訪れたのは第10回大会。この時に、「種子島ロケットコンテスト大会実行委員会規約」が施行され、事務局運営に行政機関が参加しやすい環境が整いました。それから徐々にではありますが九州大学の業務負荷が低減され、ロケコンの運営を組織として対応出来るようになりました。この結果、ロケコン当日の運営や参加者への対応も改善され、参加チームのリピーターを増やすことに成功したのだと考えています。ロケコンは手作りのイベントであり、事務局スタッフ指示の下、九大学生スタッフ及び参加学生と協力しながら運営を行っています。また、ロケコン終了後には、参加者へのアンケートや事務局反省会を実施し、改善策を次回大会の企画書に反映させることで大会も成長を続けています。
4.おわりに
来年の3月に第15回大会を開催する予定で準備を進めています。航空宇宙人材育成や地域活性化の観点からこのコンテストを継続して開催する意義は大きく、大会が増々発展することを期待しているところです。
そして・・・技術発表会等でロケコンの業務紹介をしたことがきっかけとなり、今年度から工学部技術部でCanSat研修が始まりました。今年度はまず試作機を製作し、来年度大会への出場に向けて鋭意開発を進めています。実際に自分で電子工作をしてみると、人工衛星の仕組みが良く理解でき、難しい課題が次から次に出てきますが楽しみながら挑戦しています。今はGPS情報を用いて目標地点に向かって制御するプログラムを作成中。GPSの値にばらつきがあり、制御が安定せず四苦八苦しているところです。しかしながら、「頑張るぞーーーっ!!!」と研修を共にする仲間と盛り上がっています。
謝辞
このコンテストを実施するにあたり、宇宙航空研究開発機構、九州航空宇宙開発推進協議会、鹿児島県宇宙開発促進協議会、南種子町宇宙開発推進協力会および協賛企業には、大変ご尽力をいただいています。ここに深甚なる謝意を表します。また、コンテスト運営業務に携わる機会を与えていていただいた麻生先生に感謝いたします。ありがとうございました。