遠隔地に設置したRaspberry Piによるセンサー情報の収集システム

工学部技術部 設備・情報技術室 M

 

1. はじめに

 皆様の作業を効率化・自動化してみませんか?もしかしたら情報システムを導入することで、いろいろ楽ができてハッピーになるかもしれません。情報システムの種類には、「サーバ」「ネットワーク」「セキュリティ」「ソフトウェア」などがあり、それらを効果的に組み合わせて導入することができれば、その導入効果はより大きなものになるでしょう。本記事では、Raspberry Piの使用例として、「サーバ」と「ネットワーク」の技術を駆使し、遠隔地のセンサーデータを効率よく収集できるシステムを紹介します。

 

2. Raspberry Piとは 

 Raspberry Pi(ラズベリーパイ)はシングルボードコンピュータと呼ばれる小型のPCを代表する存在です。一般的なPCと同じように使うこともできますが、もともと教育を目的に開発されたものであるため拡張性が高く、それが利用範囲の広さという特徴につながっています。例えばGPIO(General Purpose Input/Output)という端子では、センサーやモーター、カメラなど様々なデバイスを接続して制御することができます。これらをRaspberry Piで連携させることにより生まれる活用の可能性は、IoTやロボット制御にとどまりません。

 “部屋の温度が上がると扇風機が自動で回る”というシステムを考えてみましょう。まずは、温度計と扇風機をRaspberry Piに繋ぎます。そしてそれらを制御するプログラム作ります。例えば、“温度が30℃を超すと扇風機が回る”というアルゴリズムを定義します。プログラムができたら、実際にプログラムを実行することで、扇風機の自動制御システムの完成です。さらにネットワークに繋ぐことで、Raspberry Piの稼働状況や温度のデータをリモートで確認することもできます(図1)。プログラムの言語は、C言語やPythonなどがありますが、GPIOやUSB端子を認識・制御できる言語を選ぶと良いでしょう。

図1 Raspberry Piを用いた扇風機の自動制御システム

 

3. どうやって遠隔地のデータを収集する?

 大牟田市動物園のキリンに取り付けたセンサーデータを収集する方法を紹介します。キリン舎にRaspberry Piを設置します。このRaspberry Piは、データを整形した後にサーバへ送信する役割を持ちます。サーバは受け取ったデータを保管しますが、このデータをダウンロードするためには、20文字のアクセスキーIDと、50文字のアクセスキーシークレットが必要になるため、高いセキュリティを保持することができます(データサーバは、SAKURA internetのオブジェクトストレージというサービスを利用)。 また、Raspberry Piを九州大学から遠隔操作することが可能です。リアルタイムでセンサー情報を観察したり、プログラムの不具合等を修正したりすることができるのです。

 このシステム(図2)ではデータサーバにデータを蓄積することで、場所を問わずにデータを収集することができます。また、データ収集やシステムアップデートのための、遠隔地と九州大学の間の移動コストや移動時間を抑えることが可能になります。

図2 実際のシステム構築のイメージ図(大牟田市動物園の例)

 

4. おわりに

 技術部へご相談の際、”どのようなことをしたいのか”を教えていただくと、もしかしたら良い方法を提案できるかもしれません。「具体的な手法は思いつかないがこんなことをしてみたい」や、「こんな方法があるけど他に良い方法はないだろうか」といったふわっとした形の相談でも構いません。

 上記の”遠隔地のキリンに取り付けたセンサーデータを収集する”という事例は、「センサーのデータをクラウドにアップロードしたい」という漠然とした相談から始まりました。ヒヤリングと検討を重ねた結果、紹介したシステムの構成に至っています。

 本記事ではシステムの概要のみを説明しましたが、もし具体的な方法が気になりましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。ご依頼を心よりお待ちしております。